第4回公演『リズム』

鮭スペアレ

作・演出/中込遊里

ラヴェルの『ボレロ』がとても好きで、いつかボレロを使った舞台を作ってみたいと思っていた。

『ボレロ』の魅力は一言ではとても言い表せないが、頑張って二言三言で言い表してみると、「シンプルなのに深い」「15分という長さが絶妙」「むしろ人生そのもの」というところだろうか。

そう、ボレロは人生そのもの、15分の小宇宙!
ボレロのオーケストラでは、シンバルは終結部のみ。
シンバル奏者は曲が最高潮に盛り上がるその時だけのために存在する。
それまではひたすら聴く。全ての音を全身に浴びながら、じっと黙っている。
人生を、小宇宙を終わらせるために。

そうだ、向かうべきはあの最終音なのだ。そして、その先には。

公演情報

日時

2008年6月12日~6月14日

場所

新宿村LIVE

作・演出

中込遊里

出演

清水いつ鹿
宮川麻理子
中込遊里
渡辺早佳
樋渡暁彦
青木康浩
鈴木優理子

スタッフ

制作:大村みちる
振付: 鈴木優理子
美術/音響:有布

概要

まったく売れないお笑い芸人の「ラブ」。目標や未来の自分が想像できずにいる女子中学生。「面白い人が好き」と言う年上の女の人に恋をして、必死に面白い男になろうと努力する不器用な青年。その青年の健気な姿自体を面白がり、実際には相手にせず遠くから眺めて楽しむ女。様々な人の思いや主張したいことを代弁する「演説屋」という商売をする盲人とその相棒。そして、食事や買い物のレシートを溜め込み、ラヴェルの『ボレロ』を聴きながらそれを一枚一枚じっくりと眺めるのが趣味の女。

演説屋はこう語る。「私はね、人を眼で見るんじゃない。声を聞くのでもない。鼓動を感じるんだよ。心臓の鼓動は、そいつの生きてるリズムだ。」

ボレロの繰り返すフレーズ、15分間変わりなく刻まれるリズムを心臓の鼓動となぞらえ、だんだんと盛り上がり火花が散るごとく終わるその瞬間を死=生の絶頂と捉えた本作品では、前半・中盤では登場人物の背景を描き、最後の15分間は、ボレロが流れる中で登場人物たちが最後の鼓動のその瞬間に向かっていく姿を曲と被せて浮かび上がらせる。