第6回公演『恋十夜』

好きでもない男に抱かれるのが最も気持ち好い。現実ではイケナイ。夢の中で、だ。

現実に於いてどうしようもなく焦がれている男、その中でも全く脈のないであろう片思いの男に夢の中で出会ったとしても、寝覚めの悪いことといったらない。「ああ、夢だったよ」のやるせなさを味わうことになるし、なにより、四六時中妄想している男との情事を夢にみることなど完全に予測された事態だから、恋に付き物のあの驚きも背徳感もまるでない。

なんの気もない男であればあるほど、予想外の夢の出会いにときめき、思いを馳せ、そんな夢を見た自分を、夢の中の肌の感覚を未だ残している起きぬけの脳を責める。夢の中では、なんのてらいも媚もなく一心不乱にかんじていた。それは確かだった。なのに、目を覚ましたらただの一人。全く行き場のないじれったい疼き。なんて報われない孤独だろう。そして同時に、なんて贅沢な孤独だろう。現実でのせせこましく時には惨めな恋の駆け引き抜きにして、純粋な恋そのものを一瞬間確かに手に入れたのだから。

私たちは今この演劇の場で、純粋な恋を手に入れよう。なんのてらいも媚もなく一心不乱にかんじるあの快びを。そうだ、目覚めの孤独をも丸ごと折り込んで、息が詰まるほどの人恋しさを全身に纏って、すっくと舞台に立ってみせよう。

あなたたちと私たちの間に、湯気の立つ出来立ての何かが生まれることを願って。


作・演出

中込遊里

上演日時

2010年6月17日~6月20日

会場

遊空間がざびぃ

出演

宮川麻理子
有布
清水いつ鹿
林 みなみ
小暮 裕介
大野 藍
大野 芽衣
藤本 真

Percussion:林 聡子
Percussion:岸浪 誉人
Contrabass:前田 治
Mandola:安井 千晶
Mandlin:朝野 玲奈
Mandlin:嶋田 眸
Guitar:平野 良晶
Piano:五十部裕明
中込 遊里

スタッフ

制作:大村みちる
音楽:五十部裕明
照明:瀧ヶ崎彩香
宣伝美術:有布