鮭スペアレ版『リチャード三世』

ウィリアム・シェイクスピア

坪内逍遥

構成

宮川麻理子

演出

中込遊里

コンセプト

これは、肉体を持たないリチャードがリチャードであり続けるための「儀式」の形を借りた演劇である。

主人公、グロースター公・リチャードは、「負の感情」をエネルギーとして行動する。生まれつき肉体の美と母親に見放されたリチャードは、他者を愛する方法を知らない。故に他者からも愛されない。だから、リチャードにとって、他者は自分に権力を与えるための「操作すべき存在」だった。他者からの承認が得られなかったリチャードにとって、自分が自分であるためには、殺人という暴力を用いるよりなかったのである。

非道の積み重ねによって、リチャードは「自分で自分が憎い」という破滅の状態に陥り、戦に負け、命を落とす。悲劇と見える結末だが、リチャードは初めからその破滅を望んでいたのではないだろうか。「自分が憎い」と口に出せた時、それは彼の人生で初めての真なる承認だったのかもしれない。リチャードの根幹がそこだとするならば、一般的に言われるような「稀代の悪人」などという特別扱いは不要だろう。

とはいえ、その承認はあくまでも強い「負の感情」であり、リチャードは完全には報われることはない。執念を遺したリチャードは「負の感情」として世界中を漂い続ける。その執念により仕組まれた「儀式」によって、肉体を持たないリチャードは俳優に憑依し、自分の人生を語っていく。自分が自分であることを確かめるために。

この戯曲解釈に加え、感染症対策の意味もあり、「一つの役を複数人が演じる=稽古や公演時やむを得ず欠席者が出た時の上演中止のリスクを減らす」「短い場を集めて構成する」「劇中の音楽、音声の事前収録」という演出とした。演目の名シーンを抜粋して上演する歌舞伎の「見取り狂言」に着想を得て、「リチャード三世」の種々のシーンを構成している。一場ごとに別の趣として味わっていただければ幸いである。

中込遊里(当日パンフレットより)

鮭スペアレ版『リチャード三世』本公演

上演日時

2021年4月17日~4月18日 全4回公演(上演時間約90分)

会場

銕仙会能楽研修所

出演

清水いつ鹿
上埜すみれ
水上亜弓
宮川麻理子(以上鮭スペアレ)
宮﨑悠理
箕浦妃紗
若尾颯太

録音出演

中込遊里 (声)
中條日菜子(バイオリン)
酒井酣山(尺八)

スタッフ

演出:中込遊里
ドラマトゥルク:宮川麻理子 
能楽指導:一瀬唯
演出助手:時田光洋
美術:北山聖子
衣装:田中麻里
宣伝美術:中平一史(Viemo)
広報:上埜すみれ
照明:植村真
音響:おにぎり海人
舞台監督:林周一(風煉ダンス) 
動画撮影および配信:山縣昌雄、岩倉具輝、山縣幸雄、伊藤就、名倉健郎
録音:上埜嘉雄
写真撮影:伊藤華織
制作:片ひとみ、野村鈴香
協力:たちかわ創造舎・風煉ダンス・津村禮次郎

助成:ARTS for the future!

声を遊ぶもくろみ 鮭スペアレ版『リチャード三世』

上演日時

2021年2月14日 全1回公演(上演時間90分)

会場

CHABOHIBA HALL

出演

清水いつ鹿
上埜すみれ
水上亜弓
宮川麻理子
中込遊里(以上鮭スペアレ)
宮﨑悠理
箕浦妃紗
五十部裕明(パーカッション)
中條日菜子(バイオリン)
酒井将義(尺八)

スタッフ

ドラマトゥルク・構成:宮川麻理子
音楽監修・音響:五十部裕明
能楽指導:一瀬唯
演出助手:時田光洋
美術:北山聖子
衣装:田中麻里
宣伝美術:上埜すみれ
照明:植村真
舞台監督:林周一(風煉ダンス)
収録配信:山縣昌雄
写真撮影:bozzo
制作:片ひとみ
協力:たちかわ創造舎・風煉ダンス